15周年に向かって

Story

5、原点として胸に刻む、2006年9月3日オープンからの4カ月(3/3)

 

2007年元旦の静かな町にできた大行列


250個のゼリーを準備して迎えた2007年元日の朝。
お店のロールカーテンを開けると、そこには見たこともない光景が。なんと開店を待ちわびるお客様の長い行列ができていたのです。
しかも 10個、 20個とまとめ買いされる方が多く、わずか 1時間で用意したゼリーが完売しました。
 
予想外の事態に驚きながらも、気付いたことがあります。
行列を作ってくださったお客様は皆さん、それまでもゼリーを購入されたことのあるリピーターの方々だということ。
当時は今のように SNSやホームページで営業日などの情報発信はなく、お正月も営業すると知っていたのは、店頭の貼り紙を目にした常連さんや地元の方々だけ。
そんな皆さんが、お正月に帰省してくる子供や孫にも食べさせたいと、元日の朝からゼリーを買い求めてくださったのです。
 
翌日以降もお客様は途切れず、三が日を過ぎると今度は、帰省を終えて Uターンして行く方々が、「御殿場みやげ」として生フルーツゼリーを購入して行かれました。
きっと、お正月に家族大勢でわいわいと一緒にゼリーを食べたことで、いっそうおいしく感じていただけたのだと思います。
そうした方々が、それぞれの地元に戻ってゼリーを広めてくださったおかげで、フルフール御殿場の生フルーツゼリーは徐々に御殿場以外でも知られるようになっていきました。
 

困難に直面するたびに立ち返る原点

予期しない慌ただしいお正月を過ごすうちに、11月に売上が伸び悩んで以降ずっと抱えていた不安や迷いはいつしか消えていました。
今までやってきたことは間違いではなかったと、創業して初めて実感できたのです。
 
毎日心を込めておいしいものを作り、お店を清潔に保ち、丁寧な接客サービスをする。
その当たり前のことをきちんと続けていれば、必ずお客様の心に届き、売上は伸びていくはずだという自分の考えは、正しかったと確信できました。
いったん自信を失いかけたからこそ、このお正月の出来事は重要なターニングポイントになりました。
 
それ以降もお店の経営は山あり谷ありで、もっと大きなピンチもありました。
店を畳む直前まで思い詰めたこともあります。
そんな時はいつも、無我夢中だった創業直後の日々を思い出して、「あそこで頑張れたんだから大丈夫」「とにかくおいしいゼリーを作り続けよう」と、自分を奮い立たせてきました。
私にとってあの4カ月は、方向を見失いそうな場面でいつも立ち返る原点であり、今なお、迷わず進み続けるための道しるべです。